2008年3月6日木曜日

第七回 -天皇をめぐる神話 その一-

ここで『古事記』や『日本書紀』に書かれている天皇をめぐる神話を見ておこう。

天地の創造は、天の国である高天原に三人の神が生まれる場面から始まる。アメノミナカヌシノカミ(天之御中主神)、タカミムスビノカミ(高御産巣日神)、カミムスビノカミ(神産巣日神)が「造化の三神」と呼ばれる神で、続いて二神が生まれる。これら合計五神は特に性別はなく、すぐに身を隠す。以後、表だって神話には登場しないが、根源的な力を持つ神々とされている。

やがて、地からもいろいろな神々が出現し、やがて初めて男女の神としてイザナギノミコト(伊邪那岐命)イザナミノミコト(伊邪那美命)が現われ、結婚して八つの島々を産む。これが国産みの神話である。イザナギとイザナミは、淡路島をはじめ四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、本州と八つの島を産んだことから、わが国は「大八島国(おおやしまぐに)」とも呼ばれることになった。

その後、イザナミは火の神を産んだために死んでしまう。イザナギは妻を慕って、死者の世界である黄泉の国まで追いかけて行くが、そこで妻の腐乱した姿を見て驚き、逃げ帰ってしまう。

黄泉の国で穢れてしまったイザナギは、日向の阿波岐腹で禊をし、身を清める。その時、左の眼を洗ったときに生まれたのがアマテラスオオミカミ(天照大神)で、皇室の先祖となる太陽神である。続いて、右の眼を洗うとツクヨミノミコト(月読命)が現われ、鼻を洗うとスサノオノミコト(須佐之男命)が生まれた。アマテラスは太陽の女神で高天原を治め、ツクヨミは月の神で夜の世界を治め、スサノオは海を治めることになる。

ところが、スサノオは、母イザナミのいる根の国へ行きたいと泣き叫び、そのすさまじさで天地に大きな被害を与えた。そこで、スサノオは根の国へ行く前に、姉に挨拶をしようと、アマテラスが治める高天原へと登っていく。これに対してアマテラスは、乱暴者のスサノオが高天原を奪いに来たのかと勘違いし、ものものしく武装して迎えた。

スサノオは、アマテラスの疑いを解くために、身につけている物などから子神を産み、その性別により身の潔白を証明した。これを見てアマテラスはスサノオを許したが、その後も、スサノオは、田のあぜを壊したり、女性が織物をしている所にはいだ馬の生皮を投げ込んだり、とんでもない乱暴を働く。

心を痛めたアマテラスは、入り口が大きな岩でふさがれた天岩戸の中に隠れてしまった。日の神であるアマテラスが隠れたため、世界は真っ暗闇になり、高天原の神々は困ってしまう。そこで八百万の神が集まり、どうすればよいか相談した。すると、とにかく賑やかに騒いで、アマテラスが不思議に思って外をのぞき見ることにしようということになった。

神々は八咫鏡(やたのかがみ)や八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)をつくり、それを榊につけ、フトダマノミコト(布刀玉命)が御幣として捧げ持った。アメノコヤネノミコト(天児屋命)が祝詞を唱え、アメノウズメノミコト(天宇受売命)が岩戸の前に桶を伏せて踏み鳴らし、胸をさらけ出して、裳の紐を陰部までおし下げて踊った。その滑稽さに、八百万の神々が一斉に笑い、まるで高天原全体が鳴り響くようだった。

神々の賑やかな笑い声を聞いたアマテラスは、何事だろうと思い、天岩戸の扉を少し開け、アメノウズメにわけをきいた。アメノウズメが「あなた様より貴い神が現われたので喜んでいるのです」と答えるのと同時に、アメノコヤネとフトダマがアマテラスの前に鏡を差し出した。

アマテラスは、鏡に映る自分の姿をその貴い神だと思い、もっとよく見ようと岩戸をさらに開けた。そのとき、隠れていたアメノタヂカラオノカミ(天手力大神)が、アマテラスの手を取って岩戸の外へ引きずり出した。こうして、高天原も葦原中国(あしわらなつくに)も明るさを取り戻したという。

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